シリーズ第1巻 レビュー

"鴨志田一先生の隠れた名作" 『Just Because!』 感想 ネタバレ レビュー

こんにちは、Kanon です。

今回は私が一番好きな作家様である、鴨志田一先生の『Just Because!』についての感想記事となります。

大学受験期の少年・少女の葛藤を描いた作品で、毎年の受験シーズンである1~3月にかけて見返したくなる作品です。

詳しく見ていきましょう。

あらすじ

あいつを好きな君の横顔が、たまらなく綺麗だったから――

高校三年の冬。残りわずかとなった高校生活。このまま、なんとなく卒業していくのだと誰もが思っていた。突然、彼が帰ってくるまでは。中学の頃に一度は遠くの街へと引っ越した同級生。季節外れの転校生との再会は、「なんとなく」で終わろうとしていた彼らの気持ちに、小さなスタートの合図を響かせた――。2017年10~12月に放映となるテレビアニメの原作小説。湘南を舞台にした青春群像劇を、アニメのシリーズ構成・脚本を手掛けた鴨志田一が執筆。

『Just Because!』 鴨志田一 メディアワークス文庫 2017年11月25日 発行 より引用

こんな人におすすめ!

  • 受験と恋愛が絡んだ作品が好きな人
  • 青春ジュブナイルものが好きな人
  • お色気やハーレムネタ抜きの、シンプルに恋愛模様を楽しみたい人

以上のどれか一つにでも当てはまる人にはとてもおススメです!

ネタバレなし感想

twitterに投稿していたネタバレなし感想はこんな感じでした。

以降で詳しく見ていきましょう!

以降はネタバレを含む感想になるので、嫌な方はブラウザバックをお願いいたします。

ネタバレあり感想

本作はアニメ視聴後に見るのがおススメ

本来(アニメ)は、瑛太・陽斗・美緒・葉月・恵那の5人の心模様が描かれている作品で、この5人それぞれの心情の変化を楽しめます。

しかし小説版は視点が主に瑛太と美緒に絞られています。

陽斗・葉月・恵那の視点でのストーリーや、彼らの行動理由などについてはほとんど描写されることがないので、小説から読んでしまうと、「この人たちなんでいまこんなことしてるの?」というイマイチ行動原理の根拠が分からないところが出てきます。

なので、アニメを見たうえで、瑛太と美緒の視点で、

「なるほど、このときこう考えてたのね」

と瑛太と美緒の心理・思考を補完する意味合いが強い作品だと思いました。

この記事もアニメを見ている前提で書いていきますので、ぜひ先にアニメを見てみてください!

アニメとの違い

私が気づいたアニメ版との違いはこのあたりです

  • アニメでは登場する葉月の妹弟たちは登場しない
  • 写真部のメンバーである清水と山口は登場しない(存在だけは描写されている)
  • 瑛太が美緒と同じ大学を受験しようとするのを知るのは、アニメだと陽斗のおばあちゃん経由だけど、小説では小宮から知らされている
  • 美緒が陽斗に消しゴムを返すシーンは、小説版だとすごくあっさり描かれる
  • 葉月と陽斗の初詣のシーンや、再告白のシーン、葉月が最後の最後で陽斗に告白の返事をするシーンは全く描かれない

他にもいろいろとあるのかもしれません。

この葉月の妹弟たちが登場しない時点で、「陽斗・葉月に関しては描かれないんだな」ということが分かりました。

逆に瑛太と美緒の心情については詳しく描かれたりしています。

美緒が陽斗に消しゴムを返すシーン

このシーンで、「美緒は陽斗への恋心に決着をつけるんだな」というのが理解できます。

アニメではこのシーンで、美緒の回想やらは特に入らないため、 「美緒は陽斗への恋心に決着をつけるんだな」ということ以上の情報は視聴者が推測するしかありません。

しかし小説版では、美緒視点で心理が詳細に描かれています。

見つけた宝物を、大事に抱え込んで……ずっとひとりで大切に守っていることしかできなかった。

誰にも伝えず、だれにも知られないように、思いを相手に告げようともしなかった。

大事で、大切で、傷つけたくなかったから。

でも、傷つけたくなかったのは、結局、自分の気持ち……。自分自身……。

傷つきたくなくて、思いを大事にしている自分を大切に守っていただけ。

『Just Because!』 鴨志田一 メディアワークス文庫 2017年11月25日 発行 より引用

なんというか、この感情って恋というより、思い出って感じなんですよね…過去に自分が体験した思い/気持ちを綺麗なまま保存しておきたいがゆえに、自分の気持ちを相手に伝えることで、過去の思い出が嫌な思い出で上書き保存されてしまうのを嫌がっているような…そんな気持ちでしょうか?

そう考えるのは決して悪いことなのではなく、むしろ高校生くらいの年齢ならそう考えるのが自然なのでしょうしね。

美緒のセンター試験当日の朝のシーン

雪のせいで最寄り駅で立ち往生している美緒のもとへ瑛太が駆けつけるシーン。

このシーンもアニメでは瑛太の表面的な感情だけが描かれていましたが、小説版では、「ここで美緒のもとに現れたら、さすがに美緒も自分の気持ちに気づくだろうな」ということを、走りながら瑛太が考えていることが描かれています。

ただ、アニメでも小説でも駅にたどり着いた瑛太と美緒のやりとりで、

「なんでいるの?」

「たまたま通りかかって」

「家逆方向じゃん」

というやりとりがあるのですが、この瞬間では美緒が瑛太の気持ちに気づいた素振りはありません。

この瞬間ではアニメでも小説でも美緒の頭はこれからの試験のことでいっぱいなわけで、乗り込んだ電車の中でも「もう勉強したこと忘れた」というような泣き言を漏らしたりしています。

そしてアニメ版では、美緒は試験を終えて電車に乗って帰路に就く際、向かいに座った中学生?の男女の、

「荷物私が持つよ」

「いい」

といって荷物を女の子に譲らない男の子を見た際に過去の美緒と瑛太のやりとりを回想します。

アニメ版だと回想のみですが、小説版ではこのタイミングで美緒は瑛太の気持ちに気づき、美緒もまた瑛太への気持ちに気づいたことが明確に描かれています。

恵那推しには物足りない!

あくまで小説版は瑛太と美緒の視点でのストーリーになるので、恵那の人柄や感情についてはそこまで詳しく描かれていません。

具体的には、瑛太をデートに誘うための文章を考えていたり、デートの前に鏡の前でずっと前髪を気にしているようなシーンがありません。

なので、恵那の一生懸命さや可愛さというのはアニメのほうが伝わると思います。

私のようにアニメ→小説の順にみていて、恵那推しの人間にとっては残念のひとこと!

逆に小説→アニメの順で見た人の場合は、アニメを見ることで恵那の良さに目覚めるのではないでしょうか

総評

受験期…というか、高校3年生という大きく進路が分かれる時期で、高校生としていられる残り少ない時間のなかで、後悔を残さないよう行動する彼ら・彼女らは、見ていてとても応援したくなります。

メインは恋愛なのですが、就職しようとしている子が進学組の子のことをうらやましいと思ったり、下宿することで物理的に距離ができたりといった環境の変化を考えたりといった、"進路"というテーマに対する登場人物たちの考え方もうまく表現されていて、鴨志田先生の十八番である、「思春期の少年少女の心理描写」がいかんなく発揮されている作品だと思います。

鴨志田一先生の作品が好きな人に、ぜひ一読することを勧めたい作品です。

以上、『Just Because!』 感想 ネタバレ レビューでした。

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