
こんにちは、Kanon です。今回は…

かつび圭尚先生の『問二、永遠の愛を証明せよ』の感想記事です。

詳しく見ていきましょう!
あらすじ
初夏に友達から始め、少しずつ距離を縮めてきた青ヶ島さん──青ヶ島悠乃。
ある日偶然、久しぶりに再会した元カノの妹、朱鷺羽凪沙。
時間を積み重ねて育んだ青ヶ島さんとの関係よりも、なぜか一気に惹かれてしまった凪沙との関係を選んだ僕は、ギクシャクしながらも文化祭の準備を進めていった。
ところが文化祭当日。大切な記憶を賭けたゲーム『リメンバーラリー』に巻き込まれた僕らは、失われた記憶を取り戻すため学校中を駆けずり回る。
そこに元カノ・朱鷺羽美凪と美凪の今カレ・優陽まで参加することで事態はますます混乱し!?
これは、青春の選択についての物語。今度こそ、僕は──
『問二、永遠の愛を証明せよ』かつび圭尚 MF文庫J 2022年3月25日 発行 より引用
前巻のあらすじはこちらからどうぞ
ネタバレなし感想

twitterのネタバレなし感想はこんな感じでした。
以降はネタバレを含む感想になるので、嫌な方はブラウザバックをお願いいたします。
ネタバレあり感想
傑の中に潜む"二つの恋心"
傑の中には二つの恋心が潜んでいる。
前巻の"コクハクカルテット"終了後、再会した青ヶ島悠乃と築き上げた時間の先に生まれた恋心。
前巻の"コクハクカルテット"終了後、 たまたま再会した凪沙に対して、理由はないものの心に刻み込まれた思い出から染み出した恋心。
傑の価値観である「永遠の愛を目指して努力する過程にこそ意味がある」にそぐわないはずの凪沙への恋心。
この傑の中の矛盾した感情をどう説明するのか?が今巻の大きなテーマでした。
今この瞬間にいる僕が、今この瞬間にいる君のことが好きなんだ
傑が出した答えはこういうことです。
「好きだと思った瞬間を、ずっと紡いでいって"過程"にしたい。その先に永遠の愛がある。」
傑の中に悠乃を想う気持ちは確かにある。
一緒にいて、とても居心地がいい。
悠乃に猛アタックされたなら、気持ちが変わってしまうかもしれない。
それくらいに悠乃のことも好きだけど…
悠乃とはわかりあえてしまう。
だからこそ、ぶつかりあうことはなく、争いや諍いを回避しようとしてしまう。
相手のことを理解しつくしたと勘違いして、理解をやめてしまう。
そんな未来を予期してしまったからこそ、傑は悠乃と一緒にいられないと思ったのでした。
そして、今その瞬間好きな凪沙とは、ぶつかり合うことがある。
分かり合えないことがある。
そんなとき、凪沙となら言葉を通して伝えあうことができる。
そうしてお互いの言葉を通して相手への理解をアップデートし続けていく。
"過程"を積み重ねていくことができる。
こうして傑と凪沙は永遠の愛を証明すべく、"過程"を積み重ねていくことを誓うのでした。
総評
このブログをはじめて、初めてシリーズものの完結巻についての記事を書くことになりました!
本作は"過程"を重視する主人公の価値観と、"永遠の愛"を求めるヒロインの価値観が交差し、ときに道を分かちながらも、最後は線としてつながるまでの物語でした。
相反する考え方を持つふたりの心理描写。
繊細優美な情景、心理の比喩を紡ぎだす美しい文章。
どちらも初のシリーズ作とは思えない完成度でした。
ただ、少しだけ物足りないところがあるとすれば…周りの人物の心理や物語をもう少し掘り下げてほしかった部分でしょうか。
主人公の傑は絶対的な価値観を持っていて、とても魅力的な主人公に仕上がっていたのですが、それ以外の登場人物の行動原理やバックボーンはやや弱い印象を受けました。
キャラとしては十分に立っていて、個性は出せていたと思います!
が、他の登場人物たちの価値観・感じていることをもう少し丁寧に掘り下げて、傑と同じくらい印象的な行動原理があれば、さらに満足できたかもしれません。
逆に個人的に気になったのはそのくらいで、作品全体としてはとても満足で、次回作もぜひ追いかけたい作家さんの一人に出会えました!
素晴らしい作品に出会えたことに感謝しつつ、かつび圭尚先生の今後の新作に期待しつつ、この感想記事の筆を止めたいと思います。
以上、『問二、永遠の愛を証明せよ』 感想 レビュー ネタバレ でした。