
こんにちは、Kanonです。今回は

持崎湯葉先生の『恋人以上のことを、彼女じゃない君と。』の感想記事です。
あらすじ
たのしくて・気を遣わない・ラフな関係。
元カノと夜を共にした。ブラックな仕事に疲れた山瀬冬は、ある日大学時代の彼女・糸と再会し飲みに誘う。愚痴や昔話に花を咲かせ、こういう友達関係もいいなと思っていた矢先、酒の勢いに呑まれてやってしまった。後悔する冬だが、糸は「謝っちゃだめ」と真剣な表情で制す。「ちゃんとしようとか言わないでよ。ただ心地良いから一緒にいようよ」糸も疲れていたのだ、社会が強要する正しさや、大人としての不自由さに。こうして二人は『仕事とか恋とか面倒なことは抜きで、ただ楽しいことだけをする』不思議な関係を結ぶ。社会に疲れたアナタに贈る、癒やしとちょっとエッチな短編連作。
『恋人以上のことを、彼女じゃない君と。』 持崎湯葉 ガガガ文庫 2022年11月18日 発行 より引用
ネタバレあり感想
一見いわゆる背徳モノかと思いますが
あらすじだけを見ると、エロを全面に押し出した官能系の作品のように思えますがこの作品の良さはそれだけではありません。
主人公・ヒロインのそれぞれが社会に対して息苦しさを感じているが故の関係性であり、それぞれの抱える苦悩についても十分に描かれています。
そして、二人の抱える苦悩について社会人の読者であれば必ず共感できることでしょう。
会社でクソ真面目に働いているんだから、それ以外の場所では不真面目でいさせてほしいというがものすごくよくわかる…
二人の気を遣わないラフな関係というのも羨ましいなと思いました。
恋人がいるとどうしても"手続き"的なものが必要になりますが、それがない関係というのは気楽そうです。
漫画にはなりますが、『こういうのがいい』という作品があったり、世間的にそういった関係を求めている人は少なからずいそうです。
ただこの作品内でも問題になっていましたが、どちらか一方がラフな関係から本当の恋人関係に発展させようとした場合、関係がこじれそうなので将来のことを考えるといずれにせよ面倒なことになりそうですね(笑)
ひとつだけ残念なことが
この作品、今年読んだ中でもかなり上位に食い込んでくるほど面白い作品でした。
ただひとつだけ残念なことがありまして…
それは少年向け媒体で描かれていることです。
現状の描写でも文句なく楽しむことができましたが、できれば青年向け媒体で行為のシーンなんかももっと具体的に描いてほしい…という欲望が湧いてきました(笑)
行為のためだけの関係を全面に押し出しているわけではなく、あくまで"やりたいことを気楽にやろう"という関係なわけなので、性描写を中心に描くのがこの作品の本懐ではないとは思います。
が、少なからずこういった"背徳感のある男女関係"と数回の行為のシーンを描いていることを考えれば不完全燃焼感というか、行為のシーンについてももっと読みたかったです。
総評
お話の終わり方的にこの1冊で完結?かと思いますが、少し続きを読んでみたいと思ったり思わなかったり。
がっつり続編というのは話の区切り的に難しいとは思うのですが、後日談的な立ち位置でいくつか短編を読んでみたいです。
市川さんのその後や、糸のその後なんかが気になります。
ただ「もう少し先を読んでみたい」と思わせるような終わり方の作品はその一冊を十分に味わえる作品であることが多いので、そういう意味でこの余韻は、この作品の価値を裏付けている証拠だなと思います。
以上、『恋人以上のことを、彼女じゃない君と。』 の感想 レビュー ネタバレでした。