
こんにちは、Kanonです。今回は…

中西 鼎先生の『たかが従姉妹との恋。』の感想記事です。
あらすじ
初キスの相手は四つ年上の従姉だった。
初めてキスをしたのは幹隆が小学六年生の時、相手は四つ年上の従姉「あやねえ」こと、中堂絢音。
「みっくんはさ、私のこと。いつかは絶対に、忘れないと駄目だよ」
だが、幹隆はいつまで経っても、あやねえのことを忘れられずにいた……。幹隆の祖父・中堂源一郎が死んだ。大富豪であると同時に恐ろしい女たらしだった彼にはたくさんの孫がおり、彼の遺言状により孫たちには都心にあるマンションの一室が与えられた。
都内の高校へ進学し、そのマンションで一人暮らしを始めた幹隆は、懐かしい人物と再会する。同い年の従妹・真辺伊緒と、その双子の妹の真辺眞耶。彼女たちもマンションの一室を相続したことで、故郷の三重から東京へ越してきたのだ。互いの部屋を行き来してのお泊り会など、幹隆にとっては不本意ながらも彼女たちとの賑やかな日常が始まる。そんなある日、幹隆はマンション内であやねえと再会する。彼女もまた同じマンションの住人だったのだ。
大学二年生になった彼女は、幹隆の鮮烈な記憶の中のまま美しく成長していて……。初恋の相手は四つ年上の従姉だった――甘くて苦い恋物語。
『 たかが従姉妹との恋。 』中西 鼎 ガガガ文庫 2022年12月20日 発行 より引用
ネタバレあり感想
流行りのライト文芸寄りの作品
あとがきを読むに流行りに乗っかって書いた作品ではないと思います。
が、内容的には最近流行りのライト文芸寄りの作品。
ここ最近ガガガ文庫から出版される作品はこのテの作品が多い気がします。
まあ最近どころかガガガ文庫からの出版作品は昔からこういう傾向がありますが…
個人的には燥ぎ気味の文体よりもライト文芸寄りな落ち着いた文章表現のほうが好きなので、昔からガガガ文庫の作品は好感度が高いものが多いです。
テーマはタイトルの通り
従姉妹との恋ですね。
ただし表紙のお姉さん一人との恋愛というわけではなく、他にも二人の従姉妹が登場します。
しかし主人公は恋心かどうかは測りかねている様子。
「従姉妹との恋」という合法ながらも一般的ではない価値観をどう飲み込むのかに苦心している姿が描かれています。
ただ恋の相手である周りの女の子たちはそんなことお構いなく好意をぶつけているように見えますが…
それも「幼馴染」に近い振舞にも思えます。
今巻だけではまだはっきりとしたことは描かれていません。ただ一人を除いて…
メインヒロインはお姉さん
小学生の頃に一度だけキスした相手…「あやねえ」との記憶が美しく描かれています。
が、「従姉妹」「年の差」という主人公にとっての障害が「あやねえ」への気持ちにストップをかけている描写が多いです。
極めつけは、従姉妹への恋愛感情を振り切るために同級生の女の子と付き合うことを目標としているように見えるところ…
この同級生の女の子、なんだか可哀そうな結末を迎えそうな気がしてならないです。
今のところこの同級生の女の子を含めて、主人公たちの間で大きな関係性の変化はありませんが…これからどうなるのでしょうか。
総評
過去に恋した…かもしれない人が思い出の中で美化されてしまっている主人公の前に、その美化された人が再び現れるお話。
思い出の中の彼女たちと現在の彼女たちとの間で揺れ動く主人公の気持ちの変化を繊細に描いた作品でした。
恋の定義って難しいですよね。
恋なのか、憧れなのか、友情なのか…
はっきりと定義することは思春期の彼ら彼女らには難しいわけで、本作の中ではそのあたりの定義をうんうん考える登場人物たちの姿が描かれています。
今巻では大きな関係性の変化はありませんでしたが、これから先どうなるのか…楽しみです。